火星にまつわるクラシックの曲としては、イギリス人ホルストが作曲した管弦楽組曲「惑星」が有名です。地球と、作曲当時まだ発見されていなかった冥王星を除く七つの惑星を扱っています。
第一曲は火星です。戦争をもたらすものの象徴として描かれ、一貫して戦闘的で、持続する強烈なリズムで貫かれた曲です。
第二曲は金星です。一転して平和を表現した安堵感のある曲になっています。
第三曲は水星です。水星の英語マーキュリーは水銀をも意味し、あたかも水銀がコロコロ転がるような曲です。
第四曲は木星です。惑星最大の星であり、この組曲の中でも一番規模が大きく、いちばん有名な曲でしょう。あのダイアナ元皇太子妃の葬儀の時に演奏された曲が第二主題として現れます。
第五曲は土星です。老年を表現している曲です。老後の不安、人生の達成感など、人生の秋を感じさせます。
第六曲は天王星です。魔術師を表現しています。呪文のようなファンファーレで始まり、ファゴットのおどけたリズムがいろいろ変化しながら次第に激しくなり、パイプオルガンの強烈なグリッサンドで頂点に達します。デュカス作曲「魔法使いの弟子」と双璧をなす魔術師を描いた音楽の傑作です。
第七曲は、海王星です。発見当時はまだ神秘のベールに包まれた星であったようです。曲のほうも終始弱音で演奏され、途中から舞台裏では歌詞のない女性合唱和音が始まり、次第に消え入るように終わります。
演奏ですが、何十種類ものCDが出ており、どれを聴いていいか迷いますが、デーヴィッド・ロイド=ジョーンズ指揮ロイヤル・スコテッシュ管弦楽団(ナクソス)はいかがでしょうか。最新録音で音も良く、廉価です。そして何より、ホルスト研究家のコリン・マシューズが自ら作曲したという「冥王星」が入っています。 毛色の違ったところでは、フランス物のスペシャリスト、デュトワ指揮モントリオール管弦楽団(ポリドール)の「惑星」はいかがでしょうか。デッカの素晴しい録音によって、コントラバスの低音、チャーミングな鉄琴の高音が明瞭に聴くことが出来ます。また、時折、フランスの管弦楽曲を思わせる色彩美も感じられ、一風変わった「惑星」を聴くことが出来ます。 ああ、日本も含めて犯罪、争いが絶えない地球に、今度は金星が大接近して平和をもたらしてくれればいいのですがね。
著者:岩井市 吹上歯科医院 真中信之先生

